この記事ではインフルエンサーマーケティングにおいて、PR投稿をするにあたり、注意すべき法律や表現について説明いたします。
PRする商品やサービスを実際使用してその使い勝手などを投稿する「インフルエンサーPR」には、実は投稿内容の表現について、法律にかかわる部分があることをご存知ですか?
たとえば、 化粧品、サプリメントや健康食品、あるいは医療エステなどでは「薬機法(旧薬事法)」によって「●●に効く」「●●が治る」などをはじめとした表現に規制がかけられています。
他には、 PRする製品を良いものだと誇大にアピールする(優良誤認)ことや、 「今だけ安い」と言いながら実は年間とおして同じ値段だった(有利誤認) なども、「景品表示法」に抵触します。
インフルエンサーは、これらを知らず知らずのうちに表現してしまうことによって、フォロワーからの信頼を失ってしまう可能性があります。依頼してきた企業の配慮が足りないことが原因ですが、「知らなかった」では済まず、何より大切なフォロワーを裏切る行為になります。
自分を守るためにも、フォロワーとの信頼を維持するためにも、自分のメインジャンルにかかわる法律については最低限学んでおきましょう。
目次
薬機法
薬機法とは
旧薬事法。正式名称を、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。2021年8月に、薬機法改訂が行われ、課徴金制度が導入されました。
課徴金制度導入の趣旨
虚偽・誇大広告の販売で得た経済的利得を徴収し、違反行為者がそれを保持し得ないようにすることによって違反行為の抑止を図り、規制の実効性を確保するための措置として、課徴金制度を導入する。
対象製品
- 化粧品(特にPR商材として多いので要注意!)
- 医薬品
- 医療機器
- 医薬部外品
- 再生医療等製品
Tips
健康食品やサプリメントに関しては、一般食品(※)と同じ定義にあります 。
その為、あたかも医療品のような効果効能を訴求してしまうと薬機法に抵触するため、表現については要注意。
※国が認めた特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品は除く。
また、特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品は、効果や機能性について消費者庁長官から認められた内容のみの表示が可能の為、それ以上の表示は不可となります。
規制内容
規制されている内容の中でも、インフルエンサーマーケティングにおいて、特に広告主とインフルエンサーが共に留意すべき内容は「広告規制」についてです。
広告規制
虚偽・誇大広告等の禁止(薬事法第66条)
- 広告(PR投稿/広告配信)を実施するうえで、 医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する虚偽・誇大な記事の広告・記述の禁止。
- 「医師等が保証した」と誤解を与えるおそれのある記事の広告・記述の禁止。
- 対象者:こちらの禁止対象は、個人・法人問わず、広告主(メーカー)に限らず広告代理店・広告を掲載するメディア、インフルエンサーという個人ももちろん対象となります!
- 懲罰内容:2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金 + 課徴金制度の課徴金額
┗課徴金は、違反していた期間中、対象商品の4.5%売上額が徴収されます。
※課徴金が225万円(対象品目の売上げが5000万円)未満の場合は対象外。
※このとき、同一の事案に対し、景品表示法の課徴金(売上額の3%)がある場合は、この額を控除した売上額に対して課されます。
※課徴金対象行為に該当する事実を、事案発覚前に違反者が自主的に報告したときは50%の減額がされます。
本日はPR商材としても特に多い「化粧品」について、詳しく見ていきましょう。
化粧品は、事実であれば、標ぼう可能な効能効果が56個と決められています。
これはつまり、使用できる標ぼうは「消費者庁が認めているこの56個」の範囲のみとなります。
化粧品で標ぼう可能な効能効果
頭皮・毛髪について
(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。皮膚について
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。
(21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
(33)ひげを剃りやすくする。
(34)ひげそり後の肌を整える。
(35)あせもを防ぐ(打粉)。
(36)日やけを防ぐ。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。香りについて
(38)芳香を与える。
爪について
(39)爪を保護する。
(40)爪をすこやかに保つ。
(41)爪にうるおいを与える。唇について
(42)口唇の荒れを防ぐ。
(43)口唇のキメを整える。
(44)口唇にうるおいを与える。
(45)口唇をすこやかにする。
(46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48)口唇を滑らかにする。オーラルケアについて
(49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。皮膚について
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
注意事項
注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。
引用:化粧品の広告における薬機法 | 健康食品・化粧品に関わる薬事法・景品表示法 | 薬事法広告研究所
参考:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について | 厚生労働省
PR投稿における表現事例
①スキンケア商品
NG:スキンケアする前と後で水分量をチェックしたけど目に見える変化があったんだよ
OK:スキンケアする前と後で水分量をチェックしたけど驚きの結果だったよ
理由:数値上の変化であって、スキンケアをして短時間で目に見えるほどの変化は見られない、「虚偽拡大広告」に該当する為NG
NG:肌を整え、バリア機能を高めてくれるオイルセラム
OK:肌を整え、バリア機能を守ってくれる/サポートしてくれるオイルセラム
理由:スキンケア商品に「肌のバリア機能を高めてくれる効果」が認められていない為NG
NG:お肌の新陳代謝を高めてくれます
OK:お肌のリズムをサポートしてくれます
理由:化粧品に「肌の新陳代謝を高める」効果が認められていなく、化粧品の効能範囲を超えている為NG
NG:毛穴がなくなった
OK:毛穴が目立たなくなった気がする
理由:毛穴がなくなることはない為NG
NG:肌が白くなった
OK:明るい肌を演出してくれる
理由:認められている化粧品の効果効能に「美白」は存在せず、肌の黒ずみを消す行為は医療治療に該当する為NG
ただし、「ファンデーションを塗ることで肌を白く見せる」という意味合いが含まれるものはOKとします。
②ファンデーション
NG:ほくろが消えた
OK:ほくろが隠れた/見えにくくなった
理由:実際に消えることはなく、メイクアップ効果によるもの、虚偽拡大広告になる為NG
NG:圧倒的カバー力
OK:驚きのカバー力
理由:「圧倒的」は比較表現で他社製品との比較、景品表示法に抵触する可能性がある為NG
③薬用コスメ
NG:Before・After のコラージュ写真や比較している動画
理由:薬用商品の場合、Before・Afterで比較した広告がNG
④マスカラ
NG:キープする効果が高い
OK:キープ力が高い
理由:「化粧品」の標ぼう可能効果効能として認められている表現ではない為NG
⑤ヘアケア商品
NG: 髪の毛を修復してくれる効果がある
OK: 髪の毛を補修してくれる効果がある
理由:ヘアケア商品に「髪の毛を元に戻す効果」が認められていない為NG
・修復…修繕して元通りにすること
・補修…傷んだところを補いつくろうこと
NG:髪の潤いや栄養を逃さずバリア機能を高めてくれる
OK:髪の潤いを逃さず保ってくれる
理由:ヘアケア商品に「髪の毛のバリア機能を高めてくれる効果」は認められていない為NG
(その他事例 )
薬事法には、注釈をつけることでその表現が認められるケースもあります。
- 美白:*メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ
- 毛穴もケア:*肌を引き締め、毛穴を目立たなくするケアのこと
- 肌が明るくなる:*古い角質や汚れを洗い流すことによる
- 透明感:*古い角質や汚れを洗い流すことによる
- エイジングケア :*年齢を重ねた肌にうるおいを与えること
景品表示法
薬機法のほかにも、広告をする際に気をつけなければいけない法律がもう一つあります。それが景品表示法です。
景品表示法とは
「不当表示」や「不当景品」を規制する法律のことです。消費者が良い商品やサービスを享受できるようにするために、誇張表現をした商品や過大な景品類の提供を禁止しています。
その中でも、優良誤認表示と有利誤認表示という概念があります。
これもPR投稿をする際の表現には注意が必要です。
優良誤認表示とは
サービス・商品の品質や規格などの「不当な表示」にあたる行為です。「実際よりも良いものであると示す」「競合他社のサービス・商品よりも優れていると示す」などが該当します。
有利誤認表示とは
商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が有利誤認表示に該当します。
また、実際に日常的、一般的に使われている「最大級・絶対的」表現も、 商用目的となれば、気をつけなければなりません!
最上級表現の使用NG
自社製品の品質や規格、その他の内容や価格、その他の取引条件について、実際のものもしくは競争事業者のものよりも著しく優良や有利であると一般消費者に誤認されるおそれがある表示は掲載できません。
詳細は、法令をご確認ください。 出典:消費者庁ウェブサイト(景品表示法)
下記はあくまで一例にすぎませんが、文脈によって、個人の感想の場合は、最上級・絶対的表現に該当しないこともあります。
最大級・絶対的表現の例
- 数値により優位性を示す言葉
「世界一」「日本一」「ナンバー1」「第1位」「一番」「ピカイチ」など- トップを表す言葉
「トップ」「最初」「最大」「最大規模」「最小」「最安値」「最高」「最強」「最優秀」「最高峰」「首位」「ベスト」「チャンピオン」「ダントツ」「最も」「至高」など- 「初」を表す言葉
「初めて」「最初に」「日本初」「世界初」「第一号の」「第一人者」「元祖」「これまでにない」など- 1つしかないことを表す言葉
「唯一」「当社だけ(のみ)」「よそにはない」「独占」など
引用:7. 最上級表示、No.1 表示【第3章3.関連】 - ヘルプ - Yahoo!広告
但し、上記最大級・絶対的表現「最大」「最高」「最小」「最速」「No.1」「世界初」などは、以下2点の条件を満たしていれば表現が可能となります。
- 広告掲載基準
- クリエイティブ内の表示が省略されない箇所に第三者によるデータ出典・調査機関名および調査年が明記されていること。
- 調査データが最新の1年以内のデータであること
参考:7. 最上級表示、No.1 表示【第3章3.関連】 - ヘルプ - Yahoo!広告
ステマ
ステマ(ステルスマーケティング)とは
企業から報酬をもらって製品のPRを依頼されているにもかかわらず、そのことを隠し、「良いものを見つけた」とあたかも自然に製品を見つけたように宣伝をしてフォロワーにウソをつく行為です。
「ステマ」はPR投稿の表現において炎上事例が多くあるので、広告主もインフルエンサーも一度は目にしたことがある、軽く理解している方は多いかと思います。
「ステマ」は一番炎上のリスクがあるので、報酬が発生する投稿であれば必ず広告ということを隠さないことが大事になります。
「インフルエンサーが自分で製品を見つけて紹介してくれた」としたほうがイメージがよいと思いこみ、
- 企業のPR案件であることを示すハッシュタグ「#PR」を付けないでください。
- 企業からのPR案件であることは隠してください。
と依頼してくる企業担当者も残念ながらゼロではありませんが、こうした依頼はステマ(ステルスマーケティング)をインフルエンサーにさせる行為となります。
ステマ(ステルスマーケティング)は発覚すればニュース等で取り扱われるなど大きく炎上する場合もあり、インフルエンサーにとってはフォロワーの信頼を損ない、企業側もステマを行わせた企業として認識され社会的信用を落とす重大な事態へ陥ってしまいます。
ステマを防止するためには
①広告主とインフルエンサーの関係性を明示する
WOMJ(The Word of Mouth Japan Marketing Association―WOMマーケティング協議会)では、
- 主体の明示:マーケティング主体の名称(企業名・ブランド名など)の明示
- 便益の明示:金銭・物品・サービスなどの提供があることの明示
を表記することをガイドラインで推奨しております。
たとえば、
広告主が金銭をインフルエンサーへ提供して自社サービスをPRしてもらう場合、インフルエンサーは「●●(企業名・ブランド名など)さんとのタイアップ投稿です」
広告主の新製品をインフルエンサーへ提供して体験してもらう場合、インフルエンサーは「●●(企業名・ブランド名など)さんから新製品をいただきました」
広告主の主催する有料のイベントにインフルエンサーを招待した場合、インフルエンサーは「●●(企業名・ブランド名など)さんのイベントにご招待いただきました」
などのような表現となります。
このとき「広告主」と「インフルエンサー」との間に仲介業者がいる場合は、中間業者とインフルエンサーの関係性を示すのではなく、広告主とインフルエンサーとの関係をユーザーに明示します。
明示の表現は文字に限らず、動画像や音声などでも問題ありません。
ただし、明示している表現がユーザーにとって分かりやすくなくてはなりません。文字が小さくて見づらい、音声が聞き取りにくいなどは関係性の明示方法としては不可となります。
特に日本でも2023年10月から、ステマが景品表示法が禁じる不当表示の対象に指定されることになりました。
広告であることに関して
- 明示されていない
- 小さな文字で表示している
- 文の末尾に表示する
- 他の文字に比べ文字が薄い
- 大量のハッシュタグに埋もれさせている
などをすると違反にあたり、破った場合は再発防止を求める行政処分(措置命令)の対象となったうえ事業者名が公表されます。
なお、自社の高評価や、他社の低評価の書き込み依頼も対象となります。
この規制の対象はインフルエンサーではなく企業です。
これは、インフルエンサーというSNS上で影響力の強い人々の権威性を借りることで実施されるマーケティングであるため、優良誤認・有利誤認が起こりやすく、それによって利益を得られるのは主に企業側であるためです。
また、たとえば広告主の製品をインフルエンサーに一時的に貸し出しするような場合も、二者間の関係性をユーザーが区別できないため関係性の明示が必要です。
②ハッシュタグを活用して広告主とインフルエンサーとの関係性を明示する
たとえば広告主からインフルエンサーへ金銭の提供があった場合「●●万円いただきました」と直接的に表現するのは双方とユーザーにとって抵抗がありますが、その代わり「ハッシュタグ」を活用して広告主との関係性を表現することができます。
「ハッシュタグ」とは、SNSに投稿された個々のコンテンツの内容をわかりやすく記述したラベルのことで、「#●●●」のように表記したものです。
具体的には以下のようなハッシュタグを用います。
日本では一般的に「#PR」の活用が多い印象ですが、「Public Relations」との混同を避けるためにWOMJでは別のハッシュタグの使用を推奨しています。
「#PR」以外では「#sponsored」「#タイアップ」などのハッシュタグもインフルエンサーマーケティングでは使いやすいでしょう。
また、インフルエンサーが「アンバサダー」としてすでに広告主と長期契約を結んでいる関係である場合は「#ambassador」「#アンバサダー」のハッシュタグをつけたり、インフルエンサー自身のプロフィールにて広告主との関係性を明示しておくことで、ユーザーが把握しやすくなります。
ハッシュタグはインフルエンサーマーケティング施策の内容により、適宜最適なものを選択していきましょう。
また、各SNSでは広告主(PRを依頼してきた会社)とインフルエンサーの関係性を明示する機能も備わっています(Instagramの「タイアップ投稿タグ」など)。
ステマを防止する効果的な方法となりますので、あわせて活用するようにしましょう。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、インフルエンサーマーケティングを実施する際に、知っておくべき法律や避けるべき表現についてご紹介いたしました。
フォロワーの信頼を裏切らないためにも最低限の知識を身につけ、クリーンなプロモーションを実施しましょう。
今回ご紹介した知識や事例が今後のプロモーション活動に少しでもお役に立てば幸いです。
アカウント運用やインフルエンサー起用時のPR投稿で薬機法やステマに関してご質問があればお気軽にご相談ください。
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