Instagram、YouTube、X(旧Twitter)、FacebookといったSNS上で人気の「インフルエンサー」を起用したマーケティングが今注目を集めています。
ただ、インフルエンサーマーケティングはSNSの性質上、主にBtoC(B2C)の一般コンシューマー向け施策として行われることが多く、BtoB(B2B)のビジネス向けの施策としての導入はなかなか難しいように思われています。
しかしながら、世界にはBtoB(B2B)施策としてインフルエンサーマーケティングを実施している成功事例が数多く存在します。
今回は、インフルエンサーマーケティングが活発である世界のブランド・企業の成功事例を紹介しつつ、BtoB(B2B)マーケティングとしてインフルエンサーをどのように起用すればいいのかを紹介していきます。
目次
BtoB(B2B)でインフルエンサーマーケティングを活用するメリット
まず、インフルエンサーマーケティングの特徴やBtoB(B2B)ビジネスで活用するメリットについて簡単に説明しておきましょう。
インフルエンサーマーケティングとは
インフルエンサーマーケティングとは一般的に、Instagram、X(旧Twitter)、YouTube、Facebook、TikTokなど、人気SNSで多くのファンを抱える「インフルエンサー」に自社製品やサービスを体験してもらい、その感想をSNSに投稿し口コミ効果を生むマーケティング手法です。
従来のマスマーケティングと比べて
- インフルエンサーの抱えるファンに商品を訴求するためターゲティングがしやすい
- 一般的な広告よりも広告臭が少なく受け入れられやすい
- SNSを通して口コミと拡散が期待できる
- SNS(インターネット)上で行われるためデータが取得でき効果分析がしやすい
といった特徴があります。
BtoB(B2B)ビジネスにインフルエンサーマーケティングを活用するメリット
前述のように、インフルエンサーマーケティングは様々な特徴がありますが、BtoB(B2B)ビジネスでインフルエンサーを起用するメリットには以下のようなものがあります。
自社にはないコミュニティに広く認知できる
インフルエンサーは他のユーザーに対し価値ある情報を発信し、またその専門性や人間性からすでに多くのファンを抱えています。
ファンの人々はインフルエンサーの専門領域と親和性が高い可能性が大きく、インフルエンサーと自社ビジネスとの相性が良ければそのコミュニティに対して自社の良さを効果的に伝えることができます。
業界の専門家、自社製品のヘビーユーザーによる説得力がある
インフルエンサーはその専門的な知見から発信する情報には権威性が宿るため訴求力が増し、効果的に自社製品やサービスをPRしてもらうことができます。(もちろん素晴らしい製品・サービスである必要があります)
また、もともと自社製品・サービスのヘビーユーザーである場合は、良いところ・改善すべきところを含めて訴求してくれるため、他社と比較検討中のユーザーの大きな情報源として参考にしてもらうこともできます。
開発や企画のフィードバックをもらうことができる
インフルエンサーは自身が得意とする専門分野におけるプロです。
たとえば、自社で開発した製品をインフルエンサーに体験してもらうことで専門的視点とユーザー視点の2つの切り口からフィードバックを得て製品の改善につなげることができます。
また、ビジネスの企画段階からチームの一員として参加してもらえれば、トレンドとユーザーの求めるニーズを取り入れたアイデアの創出に大きく貢献してくれることでしょう。
BtoB(B2B)インフルエンサーマーケティングのアイデアと成功事例6選
それでは、以下にBtoB(B2B)ビジネスでインフルエンサーマーケティングを行っている各企業の成功事例とポイントを紹介していきましょう。
自社製品を活用してインフルエンサーの課題を解決し成功事例としてPRする(IBMの事例)
インフルエンサーの方に自社製品やサービスを活用してもらい、インフルエンサーの課題を実際に解決した成功事例は大きなPR材料となります。
専門性と自社製品との親和性が高いインフルエンサーへ依頼し、サクセスストーリーや実際の体験をインフルエンサーに投稿してもらうことで、そのインフルエンサーのフォロワーへ自社製品の良さを訴求することができます。
世界的コンピュータ関連製品およびサービスを提供するIBMは、AI(人工知能)プラットフォームである「Watson」を有名なファッションデザイナーである Gaurav Gupta に提供。 Watson AI を活用してもらい、人工知能を取り入れた今までにないサリードレスを作成しました。
ドレスにはLEDが仕込まれ、着用する人の個性をAIが判断してその人に最適な色で輝くようになっています。
デザイナーの創作性の課題をAIとファッションの融合により解決。大きな話題を呼ぶとともに、IBMブランドの認知に大きく貢献しました。
また、この事例のような「個人インフルエンサー」だけではなく「既存顧客」も自社にとってのBtoB(B2B)インフルエンサーに十分なりえることも忘れてはなりません。
業界で有名な企業が自社サービスを利用して課題を解決した実績があるなら大きなアピールポイントになります。
顧客が抱える課題をどのように解決してビジネスに貢献できたのか、顧客担当者にインタビューして記事や動画としてコンテンツ化し、自社のSNSやオウンドメディアなどで紹介することで、有名企業の権威性を借りて自社をPRすることができます。
導入を検討している企業としては、有名企業が活用している要素が大きな説得力を生み、製品やサービスの導入を前向きに検討する一つの材料になるでしょう。
従業員をインフルエンサーとして起用・教育する「従業員アドボカシー」(Landis + Gyrの事例)
自社製品やサービスに最も近い存在は、自社の従業員です。
自社製品やサービスの熱狂的なファンである従業員を見つけ、適切な形で情報を発信してもらう「従業員アドボカシー」もBtoB(B2B)インフルエンサーマーケティング施策の選択肢として挙げることができます。
各企業のSNSアカウント運営者、いわゆるSNSの「中の人」をイメージするとわかりやすいでしょう。
わたくし SHARP_JP は、フォロワーさんが50万を超えていたのに気づかず、のんきに寝ていたことを反省しに参りました。 pic.twitter.com/rCf2KoPpnD
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) April 17, 2019
自社愛と専門性をもった従業員をインフルエンサーとして起用し、SNSなどを通して価値ある情報を発信してもらうことで、見込み顧客である企業のファンも増え、結果的に自社の顧客として獲得できる可能性が高まります。
エネルギーソリューションを提供している Landis+Gyr では、従業員に自社について発信してもらうための「パイロットプログラム」を作成。SNSを活用している従業員に協力してもらい、自社ブランドの精神や価値観、顧客への想いといった情報を発信しました。
画像:Bringing Social Media to Life in the Energy Industry|smarp
その結果、1500以上のエンゲージメント、1800のコンテンツシェア、推定10,800ドル以上の価値あるメディアを生み出したなど、大きな成果をあげ、「最も革新的なSNS活用事例」としてCorporate Social Media Awards 2016 で受賞するなど輝かしい実績を残しています。
参考:Bringing Social Media to Life in the Energy Industry|smarp
アプリのイメージキャラクターにインフルエンサーを起用(助太刀の事例)
BtoBサービスにおいても、WebサイトやSNSになどにインフルエンサーを起用することが効果的です。
職人と工事会社の新しい出会いが見つかるアプリ「助太刀」を運営する株式会社助太刀では、元プロレスラーでタレントの長州力さんをイメージキャラクターとして起用しました。
【スタッフよりお知らせ】
長州力が職人と工事会社の新しい出会いが見つかる
「助太刀」さんのイメージキャラクターに就任しました!#助太刀 があれば職人とのつながりがキレないですよ!「建設現場を魅力ある職場に」するために長州力がPRを頑張ります!#PRhttps://t.co/2ubW93EdGa pic.twitter.com/9JTV9mHenx— 長州力 (@rikichannel1203) April 4, 2022
上記のようにSNS上でインフルエンサーに投稿してもらうことで、企業やサービスの知名度上昇を期待できます。
BtoCに限らず、BtoBでもSNSマーケティングは活用していきたい手法です。
また、助太刀社は、インフルエンサーの起用について以下のように発表しています。
『老若男女問わず幅広い層から愛されている長州力さんの、パワフルで信頼感があり真摯なイメージは当社が考えるブランドイメージに合致し、また建設業界全体のイメージ向上にも資すると考え、今回の起用に至りました。
長州力さんが、プロレスラーを引退されたあともタレントとして様々なチャレンジをされ活躍されているように、当社も助太刀というサービスを通じて職人さんや工事会社が新たなチャレンジをできる環境を作ることで「建設現場を魅力ある職場に。」というビジョンの実現を目指します。』
自社のイメージやゴールに合ったインフルエンサーを起用することで、企業やサービスへの安心感・信頼感を獲得することができるでしょう。
講演会に登壇してもらう、ライブでユーザーと対話してもらう(SAPの事例)
自社で講演会を実施するといった場合、インフルエンサーにゲストとして登壇してもらうこともできます。
すでに業界での実績をつくっているインフルエンサーであれば、たとえば具体的な成功や失敗体験、業界の現状や今後の展望などを話してもらうことで講演会に参加した多くの企業のビジネス拡大のヒントになるでしょう。
さらに、ビデオライブを通して専門家インフルエンサーと世界のユーザーとの対話を実現するといった工夫もできます。
ヨーロッパ最大級のソフトウェア会社であるSAPでは毎年行っている大規模なカンファレンスでFacebookライブビデオ機能を使ってインフルエンサーとのライブチャットを配信しました。
ライブ参加者は直接インフルエンサーと対話できるということで大きく盛り上がりました。
さらに、SAP幹部との対話を通して製品をフィードバックする機会が与えられ、カンファレンスの様子は動画としてSAPのブログで公開され、多くの人と共有されました。
自社の発信媒体に寄稿してもらう(Video Fruitの事例)
自社に発信媒体(SNS、ブログ、YouTubeチャンネルなど)があるなら、インフルエンサーにコンテンツを寄稿してもらうこともできます。
あるテーマについてのコンテンツの制作をインフルエンサーに依頼し、自身の意見と共にコンテンツとして提供してもらいます。
インフルエンサーの作った専門的なコンテンツは見込み顧客の興味を大きく掻き立てるでしょう。
WEB集客サービスを提供しているVideoFruitの創立者Bryan HarrisはSEOテストの一環としてゲストブログに投稿したところ、自社サイトへの平均的な訪問数のおよそ4倍もの人が彼のサイトを訪問しました。73%以上が新規ユーザーでサイトの購読コンバージョン率も12%と大きな成果がでました。
専門性の高いインフルエンサーの投稿はBtoB(B2B)ビジネスを展開している多くの人の注目を集めることが分かります。
たとえばシリーズ化して継続的にコンテンツを自社に提供してもらうなどができれば、ユーザーとのタッチポイントも増えるため顧客獲得のチャンスも大きくなるでしょう。
参考:3 Lessons I Learned From my First Guest Post (and all my traffic numbers)
親しみやすい「漫画」を通して認知度をアップさせる(AWSの事例)
BtoB(B2B)のビジネスは企業向けで知る人ぞ知る存在となり、広く認知させることが難しいケースも多くあります。
そこで、BtoB(B2B)の難しいサービスを漫画を通してわかりやすく紹介し認知を広げる方法もあります。
世界最大手のECサイト Amazon が提供するクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)では、漫画を取り入れたサービスの紹介を行っています。
イラストを通して分かりやすく自社製品を紹介できるため、漫画はBtoB(B2B)ビジネスと相性がよいマーケティング手法の一つといえるでしょう。
実際、「マンガでわかる●●シリーズ」のように、親しみにくい難解なテーマのものを漫画にしてわかりやすく解説する書籍は多く存在しており、一つのトレンドを作り上げています。
漫画は拡散性のあるSNSとの相性もよく、人気の漫画インフルエンサーに依頼してビジネス紹介の漫画を作成してもらえば一つの話題となり、自社製品やサービスの認知施策としてマーケティングに貢献してくれます。
今までの事例とは少し切り口が変わりますが、一つの選択肢として心にとどめておくとよいでしょう。
BtoB(B2B)インフルエンサーマーケティングのポイント
各企業の成功事例を見てきましたが、実際にどのようにしてインフルエンサーを見つけ、依頼していけばいいのでしょうか。
ここではBtoB(B2B)ビジネスに親和性の高い専門的知見をもったインフルエンサーを見つけ、インフルエンサーマーケティングを実施する際のポイントを紹介します。
従業員がフォローしているインフルエンサーをヒアリングするのは一つの手
インフルエンサーを探す際は、各種メディアやSNS、カンファレンスを調査してみましょう。
業界で有名なインフルエンサーは、メディアに記事を連載、あるいはインタビューを受けていたり、カンファレンスのゲストスピーカーとして招待されている場合も多くあります。
また、自社の従業員からインフルエンサーをヒアリングするというのも一つの有効な手段です。
自社の従業員は製品やサービスに深くかかわるため、自身の専門性を高めようと日々情報を集めています。
従業員のフォローしているインフルエンサーは自社との親和性が高い可能性が大きいため、ヒアリングすることでインフルエンサーマーケティングを実施するための候補を見つける手助けとなるでしょう。
インフルエンサーとコミュニケーションを通して関係を深める
起用したいインフルエンサーの候補をある程度絞ったら、インフルエンサーについてこちらが理解することが大切です。
どのような情報を発信しているのか、発言に信憑性はあるか、人柄はどうか、コメントへの対応は丁寧で的確かなど、インフルエンサーへの理解を深めましょう。
インフルエンサーはユーザーに対して日頃から情報を発信していますから、SNSやブログなどでコメントしてコミュニケーションをすることができます。
可能な範囲で自社製品についての課題を質問してみたり、講演会があるなら直接話を聞くなど、相互コミュニケーションを通して関係を深めていきましょう。
押し売りはNG!パートナーとして自社製品を理解してくれる機会を提供する
BtoB(B2B)インフルエンサーマーケティングは、自社製品の良いところも改善すべきところも理解してくれているインフルエンサーを見つける必要があります。
ただ単に「業界で有名なあなたに我が社の製品をPRしてほしい」と言っても、断られるだけです。
理想はすでに自社製品を愛用してくれているインフルエンサーを見つけることですが、難しい場合もあるでしょう。
その場合は、インフルエンサーに自社製品を体験してもらう機会を提供し、製品理解を深めてもらうよう事前依頼することも一つの手です。
製品を体験することでインフルエンサーに自社のことを理解してもらい、そのままマーケティングパートナーとして契約を結ぶこともできます。
残念ながら製品に魅力を感じてもらえず依頼をお断りされたなら、フィードバックをもらうことで製品をブラッシュアップさせることもできます。
インフルエンサーマーケティングを実施する場合はインフルエンサーに裁量権を与える
インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとフォロワー(ファン)の関係の上で成り立ちます。
企業がインフルエンサーに発信してもらいたい自社製品のメリットはたくさんあると思いますが、表現についてはインフルエンサーに裁量権を与えることが大切です。
というのも、インフルエンサーが普段から発信している内容と異なる形で情報を発信しても、ファンが違和感を感じてしまい効果的に情報が伝わらなくなる可能性があるためです。
最低限発信してほしい要素を伝え、あとはインフルエンサーの裁量に任せましょう。
インフルエンサーが心からおすすめしたいと思える製品なら、自然と発信する情報の量も増えていきます。
ステルスマーケティング(ステマ)は絶対にしない
ステルスマーケティング(ステマ)とは、一言でいうと「やらせ」行為のことで、その制作物や活動(動画像、文章、レビュー、口コミなど)が宣伝であると一般消費者に気づかれないように欺く宣伝行為のことです。
インフルエンサーに金銭を渡しその事実関係を消費者に隠したまま製品についての有利な口コミを書いてもらったり宣伝してもらうといった活動は、一般消費者を欺くステルスマーケティングに当たります。
ステルスマーケティングをしていることが発覚した場合、企業や個人の社会的信用が大きく損なわれてしまい、その後の活動に大きな打撃を与えることは避けられません。
- 広告主とインフルエンサーの関係性を明示
- 広告主がインフルエンサーへ提供した金銭・物品・サービスがあることを明示
- 情報の偽装をしない
といったポイントを守り、ステルスマーケティング(ステマ)防止に努めましょう。
ステルスマーケティングの防止方法については炎上・ステルスマーケティング(ステマ)防止マニュアルの記事にて詳しくまとめていますのでご活用ください。
BtoB(B2B)ビジネスのインフルエンサーマーケティングまとめ
BtoB(B2B)インフルエンサーマーケティングについてのポイントを各企業の成功事例とあわせて紹介してきましたがいかがでしたか。
インフルエンサーマーケティングの大前提は「自社製品」にあります。
自信をもって世界に提供できる価値ある製品・サービスであれば、インフルエンサーもその魅力を感じ積極的にサポートしてもらえるでしょう。
また、インフルエンサーに製品を体験してもらいフィードバックをもらう方法は、製品の品質向上につなげる手段として非常に有効です。
また、インフルエンサーを起用した広告施策に興味がある方は、実績13,700件以上のFind Modelにご相談ください。
インスタラボ編集部の公式記事。
支援実績13,700件、最大2.6億リーチ可能なFind Model(ソーシャルワイヤー株式会社)が運営しています。
ILライター:M.N・Y.O・T.S・R.S・K.Mの5名で運用。
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