近年、多くの日本企業が新たな市場を求め海外進出を行っています。そこで大きな課題となるのが海外におけるマーケティング戦略です。
住む人々の人種の違いや興味・関心の違いなどあらゆるものが日本と異なり、日本におけるマーケティングとは違った手法を採らなければ効果的なマーケティングを行うことができません。それはSNSを活用したマーケティングにおいても同様です。
今回はビジネスの海外進出におけるSNSマーケティングをテーマに、海外におけるSNSの利用状況や海外でSNSマーケティングを行う上で役立つアイデアやポイントについて解説してまいります。
目次
日本企業がビジネスの海外進出を行う背景
まず初めに、近年になって日本企業が活発に海外進出を行なっている背景について解説いたします。
海外進出している日本企業は増えている
販売拠点あるいは生産拠点として海外各国に拠点を構えてビジネスを展開している日本企業は増えています。
下の図は、2018年に発表された外務省の調査結果で上位12カ国の日系企業数の推移を表したものです。
画像:海外在留邦人数調査統計 平成30年要約版|外務省領事局政策課
2017年10月1日時点、海外進出している日系企業の総数は7万5,531となっており、前年より5.2%増加しました。
こちらの図からアジア・東南アジア諸国への海外進出が大きく伸びていることが分かります。
特に、アジア・東南アジア諸国は今後人口も増加が見込まれているため、市場拡大、物価の安さおよび労働力の確保などの点からメリットを感じ海外進出の拠点として選ぶ企業も多く存在しています。
参考:
日本は少子高齢化が進みマーケットが縮小している
日本企業が意欲的に海外進出を行っている理由として挙げられるのが、日本における市場規模の縮小です。これは日本の少子高齢化の進行が大きな要因の一つとして挙げられます。
以下の図は2018年に内閣府が発表した日本の高齢化に関する調査結果です。
画像:平成30年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況(第1節 1)|内閣府
総人口に見る日本の65歳以上人口の割合は、
- 1950年:4.9%
- 1970年:7.1%
- 1990年:12.1%
- 2010年:23.0%
- 2017年10月1日時点:27.7%
となっており、日本の高齢化は依然進行中であることがわかります。
日本の高齢化率は世界で最も高い水準であり、今後もさらに進行し、2065年の日本の高齢化は38.4%に上昇すると試算されています。
また、日本の少子化も深刻な問題となっています。以下は内閣府が2019年に発表した日本の少子化に関するデータです。
画像:少子化の状況及び少子化への対処施策の概況 第1部 少子化対策の現状(第1章)(令和元年版)|内閣府
子どもの出生数・出生率は逆に減少傾向にあり、日本国内の出生数は
- 1949年(第一次ベビーブーム):約270万人
- 1973年(第二次ベビーブーム):約209万人
- 1984年:約150万人
- 2017年:約95万人
となりました。
第1次ベビーブーム期には4.3を超えていた合計特殊出生率も2005年には過去最低である1.26まで落ち込み、その後微増傾向が続くも2016年には1.44と低い水準にあります。
2019年12月時点で日本の出生数は想定よりも低い90万人を下回ることが予想されており、少子高齢化は加速している現状です。
少子高齢化の進行は購買意欲の高い年齢層の人口減少と同義であり、そのまま日本の市場規模縮小につながっています。そうした背景もあり、市場規模の大きい海外に目を向け海外進出の判断をする企業が増えるのもごく自然な流れと言えるでしょう。
参考:
海外の市場規模が大きく自社マーケット拡大につながる
日本企業が積極的に海外進出を進めているもうひとつの理由として挙げられるのが海外の市場規模が非常に大きいことです。
世界でも上位の先進国である日本。その市場規模は非常に大きなものですが、国土の小ささ故に人口には限度があり、前述のとおり市場規模の縮小も進んでいます。
一方で世界に目を向けると先進国である欧米諸国の市場が大きなものであるのはもちろん、発展を続けてきたアジア周辺諸国の市場規模拡大が目に付きます。莫大な人口を抱え大きな需要と消費のある中国や、先進テクノロジーや精密機器などの開発・販売が盛んな韓国、EC事業を始めとした様々な分野で市場の成長が著しい東南アジア諸国も魅力的です。
日本に留まるばかりでは大きな成長を望むことが現状難しいため、自社マーケットの拡大につなげる有効な手段として海外進出する日本企業の増加につながっているのです。
世界・海外のSNS利用者データ
続いて、世界・海外におけるSNS利用者のデータを見てまいりましょう。
なぜ企業が海外進出した際のマーケティング手法としてSNSが効果的なのか、世界におけるSNSの現状と、5つの人気SNSの特徴やユーザーデータとあわせて解説してまいります。
以下参照:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
※以下で紹介される各SNSのユーザー数は広告配信の予測リーチボリュームなどから算出されており、各SNS企業から公開されている月間アクティブユーザー数(MAU)の数値と異なっている場合があります。
世界・海外のSNS利用データ
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
まずは全世界のSNS利用データについてご紹介しましょう。
2019年10月現在の全世界の人口は約77億3,400万人です。そのうち、スマートフォンなどのモバイル機器ユーザーは約51億5,500万人であり、インターネットユーザー数は約44億7,900万人に上ります。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
SNSなどのソーシャルメディアのアクティブユーザー数は約37億2,500万人で、そのうち約36億6,000万人がモバイル機器を通してのソーシャルメディアユーザーとなっています。
世界のインターネット利用者の80%以上の人々が日々SNSを利用しており、SNSはマーケティングを行う上で企業と消費者をつなぐ非常に重要なチャネルであることからSNSを活用したマーケティングを取り入れる企業が増えています。
Facebookの世界・海外ユーザーデータ
続いて代表的な人気SNSの世界・海外ユーザーデータを個別に解説してまいります。はじめにFacebookについて解説いたします。
FacebookはアメリカのFacebook社が運営する世界最大のSNSです。プロフィールをはじめ、文章や写真・動画の投稿、メッセージの送受信、フォロー・フォロワー、投稿・ユーザーの検索など様々な機能が実装された多機能なSNSとなっています。
カスタマイズ性も高く、Facebook社が開発したものはもちろん、ユーザーが開発したアプリを追加して機能の拡充を行うことも可能になっています。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
2019年10月時点のFacebookでリーチすることができるユーザー数は全世界で約19億3,200万人となっており、ユーザーの男女比は女性が43%、男性が57%となっています。
Facebookでリーチすることができるユーザーが多い国は
- インド:2億6,900万人
- アメリカ:1億8,300万人
- インドネシア:1億2,300万人
- ブラジル:1億2,000万人
- メキシコ:8,200万人
となっており、リーチ数1億人を超える国もあるほどの人気SNSとなっています。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
ユーザーの年齢層は25~34歳のユーザーが最も多く女性13%男性19%、次いで18~24歳が女性10%男性15%、35~44歳が女性7.2%男性9.3%、45~54歳のユーザーも5%を超える割合となっていますが、13~17歳の若年ユーザーは女性2.6%男性3.2%と比較的少ない割合となっています。
Instagramの世界・海外ユーザーデータ
次にInstagramについて解説いたします。
InstagramもFacebook同様にFacebook社が運営しているSNSで、特に写真の投稿や編集に特化しているのが特徴です。投稿後24時間で投稿が消える「ストーリーズ」も人気の機能として多くのユーザーに親しまれています。
Facebook社が運営しているためFacebookとの連携機能がある点も強みで、ユーザーデータの共有やターゲット広告の仕組みなどはFacebookと同様のものとなっています。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
2019年10月時点でInstagramでリーチできる全世界ユーザー数は約8億7,880万人であり、そのうち50.6%が女性ユーザー、49.4%が男性ユーザーとなっています。
Instagramでリーチできるユーザー数が多い国は上位から
- アメリカ:1億1,600万人
- インド:7,300万人
- ブラジル:7,200万人
- インドネシア:6,000万人
- ロシア:4,200万人
- トルコ:3,700万人
- 日本:2,700万人
となっており、日本は7位でランク入りしています。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
ユーザーの年齢層は25~34歳が最も多く女性17%男性18%、次に18~24歳の女性14%男性16%、35~44歳が女性9.1%男性7.2%となっています。
45~54歳のユーザーは女性4.6%男性3.2%とFacebookと比較して少ない割合となっていますが、13~17歳のユーザーは男女ともに3%ほどとなっています。
Twitterの世界・海外ユーザーデータ
続いてTwitterのユーザーデータです。
TwitterはアメリカのTwitter社が開発・運営するSNSで、ツイートという最大半角280文字(日本語は全角140文字)の短文メッセージが投稿できることが特徴のSNSです。
他のユーザーが投稿したツイートを引用してツイートすることができる「リツイート」機能や「いいね」を付けられる機能などがあり、文章の他に画像や動画も投稿することができます。情報の拡散性やリアルタイムの情報収集に優れているのも大きな特徴です。
短文投稿SNSゆえの投稿の手軽さが人気で日本においてもLINEに次ぐユーザー数を誇る人気の高いSNSとなっています。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
2019年10月時点でTwitterでリーチできる全世界ユーザー数は約2億6,030万人であり、そのうち34%が女性ユーザー、66%が男性ユーザーとなっています。
Twitterでリーチできる全世界ユーザー数が多い国は
- アメリカ:4,835万人
- 日本:3,565万人
- ロシア:1,390万人
- イギリス:1,370万人
- サウジアラビア:1,009万人
と続きます。日本は2位にランクインするほどの人気SNSです。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
ユーザーの年齢層は25~34歳が最も多く、女性ユーザーが8.6%で男性ユーザーが21%の割合です。次いで18~24歳のユーザーが多く女性10%男性14%で、35~49歳のユーザーが女性6.7%男性15%と続きます。
13~17歳の若年ユーザーの割合が女性4.0%男性5.2%と高めの割合になっている他、50歳以上のユーザーも比較的高い割合を占めているなど、幅広い年齢層から支持されています。
Snapchatの世界・海外ユーザーデータ
次にSnapchatのユーザーデータです。SnapchatはアメリカのSnap社が開発・運営するSNSで、スマートフォン向けの写真共有アプリとなっています。スナップと呼ばれる写真や動画を個人やグループに送信することができ、テキストの追加や簡易な編集機能が実装されています。
投稿者は投稿内容の閲覧時間を1~10秒の間で設定することができ、閲覧すると設定された時間を経過後に投稿内容が削除される点が最大の特徴です。リプレイやスクリーンショットなどで投稿内容を再閲覧することも可能ですが、その際には投稿者に通知される仕組みとなっています。
日本においてはあまり知名度の高いSNSではありませんが、投稿内容が残らないという点から気軽に写真や動画を投稿することができるとして世界的に人気の高いSNSとなっています。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
2019年10月時点でSnapchatでリーチできるユーザー数は全世界で約3億6,020万人に上ります。そのうち女性ユーザーが61%、男性ユーザーが38%であり、人気SNSの中でも特に女性ユーザーが多くなっています。
Snapchatでリーチできるユーザーが多い国は
- アメリカ:9,755万人
- フランス:2,040万人
- インド:1,880万人
- イギリス:1,785万人
- サウジアラビア:1,565万人
と続きます。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
ユーザーの割合が最も高い年齢層は25~34歳であり、女性が14%、男性が10%となっており、次いで18~20歳が女性13%男性8.1%、13~17歳が女性12%男性6.6%となっています。35歳以降が女性12%男性5.9%となっており、高い年齢層よりも若年層の人気が高いSNSとなっています。
Linkedinの世界・海外ユーザーデータ
最後にLinkedInのユーザーデータについて解説いたします。LinkedInはアメリカのマイクロソフト社の子会社であるLinkedIn社が開発・運営するSNSです。ビジネス特化型のSNSであることが最大の特徴で、その規模は世界最大級です。
ビジネスにおけるつながりを広げることを目的としており、ビジネスパートナーや人材の獲得、顧客や商談先、専門家などとのコンタクトやコミュニケーションを行うことができるツールとして非常に便利なSNSです。日本において未だ知名度は低めであるものの注目度は高まっており、近年では大企業を中心に採用する日本企業も増えてきています。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
2019年10月時点でLinkedInでリーチできるユーザー数は全世界で約6億5,340万人です。ユーザーの男女比率は女性ユーザーが43%、男性ユーザーが57%となっています。
LinkedInでリーチできるユーザー数が多い国は
- アメリカ:1億6,000万人
- インド:6,100万人
- 中国:5,000万人
- ブラジル:3,900万人
- イギリス:2,800万人
と続きます。2位以降を大きく突き放す形でアメリカのユーザー数が多いのが印象深い結果です。
画像:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
年齢層別ユーザー数では25~34歳の割合が女性26%男性34%と特に大きくなっており、18~24歳が女性9%男性12%、35~54歳は女性7%男性10%となっています。
55歳以上のユーザーは女性1%男性2%と非常に低い割合となっており、ビジネス特化型ゆえに他SNSと大きく異なる特徴が見られます。
参考:DIGITAL 2019: Q4 GLOBAL DIGITAL STATSHOT|DATAREPORTAL
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ビジネスの海外進出に役立つSNS活用マーケティングの3つのアイデア
ビジネスの海外進出を行う上でSNSをどのように活用するのが効果的なのでしょうか。
3つのSNS活用法
- SNSアカウント運用
- SNS広告配信
- SNSインフルエンサーによるPR
について、それぞれのメリット・デメリットについての解説と企業による実際の活用事例をご紹介してまいります。
1. 自社でSNSアカウントを運用
ビジネスの海外進出において挙げられるSNSの活用法の1つ目は自社でSNSアカウントを運用する方法です。
SNSを活用したマーケティングでは最もポピュラーの方法と言え、採用している企業も大変多い方法です。自社でSNSアカウントを運用するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
SNSの多くは無料でアカウントを開設できるため、金銭的なコストを抑えた上でマーケティングを実施することが可能です。
また、SNSは情報の拡散性が高いため効果的にブランディングを行うことが可能であり、継続的なブランディングを通して多くのファン(フォロワー)の獲得につなげることができます。
加えて日本国内に居ながらにして海外に向けてブランディングが出来る点も大きなメリットです。実際、世界展開を視野にいれたブランディングを目的にSNSアカウントを英語で運用している日本企業もある(事例にて紹介)など、海外進出する際の土台作りとしても活用できます。
デメリット
日本でSNSアカウントを運用する場合と異なり、展開した国に合わせた言語を用いてアカウントの運用を行わなければマーケティングの効果が出ません。
SNSアカウントの運用担当としてその国の言語に習熟したスタッフの起用や現地スタッフの獲得が必要になるでしょう。
また、SNSアカウントを自社運用する場合は継続的に投稿を行い情報を発信し続けなければマーケティング効果が望めないため、運用スタッフの負担が大きくなりがちです。
フォロワーの獲得も一朝一夕で行えるものではないため、高いマーケティング効果を得られるようになるためには時間がかることも留意しておきましょう。
海外進出企業によるSNSアカウント運用の成功事例
Instagramアカウント:@shiseido|Instagram
フォロワー数:約98万9,000人(2019年12月現在)
こちらは日本の化粧品メーカーである「株式会社資生堂」のInstagramアカウントです。化粧品の日本国内シェア1位の資生堂は世界シェアでも5位とトップクラスであり、世界約120カ国・地域で事業を展開、海外の売上比率は5割超というグローバルな化粧品メーカーです。
Instagramにおいては、まるで雑誌のようなモデルを起用した写真や美しく色鮮やかな「インスタ映え」のする写真を多数投稿し商品のPRを行っている他、クオリティの高い動画も数多く投稿されています。日本らしさを取り入れた表現の写真や動画も多く、日本や日本製品の魅力を世界に発信しています。
この投稿をInstagramで見る
この投稿をInstagramで見る
プロフィール・投稿ともに言語として英語を採用しており、世界中の人々がしっかりと内容を把握できるようにしている他、ハッシュタグの活用法も秀逸であり、海外向けにInstagramアカウントを運用する際にはぜひ参考にしたいアカウントです。
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2. SNS広告を配信
ビジネスの海外進出におけるSNS活用法の2つめはSNS広告を配信する方法です。
多くのSNSで広告を配信するシステムの整備が行われており、こちらも多くの企業が採用しているSNSを活用したマーケティング手法です。SNS広告の配信を採用する上でのメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
SNS広告の最大のメリットはターゲティングを非常に詳細に行うことができる点です。
SNS広告ではSNSユーザーの人種や居住地域、年齢や性別といったデータをはじめ、それぞれの興味や趣味嗜好などのデータを活用、広告の配信先ユーザーを細かく設定することで効率良く効果的な広告配信を行うことが可能となっています。
また、予算に合わせて広告の配信方法や配信期間・頻度を設定することができるため、低予算からでも広告の配信を行うことができます。
各SNSには効果分析ができる広告ツールも完備されているため、PDCAサイクルを回し広告効果を長期的に高めることができることも大きなメリットです。
デメリット
海外においては日本人と異なる感覚・嗜好を持った人々に対してマーケティングを行うことになります。
SNS広告で配信する広告クリエイティブの内容も現地の人々に受け入れられるものを準備しなければならないため、日本でSNS広告を配信するよりも広告クリエイティブ制作難度は高くなります。
また、SNS広告の配信枠の取得が入札方式であることもデメリットになり得ます。配信枠の取得を競合他社と競って行うことになるため、場合によっては想定以上にコストが高騰してしまうこともあります。
手軽に広告を配信できる分、競合も多いことも忘れないようにしましょう。
海外進出企業によるSNS広告配信の成功事例
画像:成功事例「CAPCON」|Instagram Business
SNS広告の事例として紹介させていただくのは、「ロックマン」「モンスターハンター」など多くの人気テレビゲームシリーズを生み出している株式会社カプコンが提供する「RESIDENT EVIL 2」です。
「RESIDENT EVIL」は世界的に人気である「バイオハザード」シリーズ作品の一つとして登場し、日本だけでなく世界へ向けたマーケティングツールとしてInstagram広告を活用しました。
この事例では、
- テレビゲームを持っている人に対して2.2倍のインクリメンタルリーチ(TVCMへの補完リーチ)獲得
- 18歳~49歳の男性ターゲット層に対して1.9倍のインクリメンタルリーチを獲得
- Instagram広告をリーチした人のうちテレビゲーム機を持っているユーザーは82%の高精度ターゲティングを実現(※TVの場合は49%)
という大きな成果をもたらしました。
テレビCMとあわせてSNS広告を活用することで世界のより多くのターゲットに対して情報を届けることに成功しました。
Instagram広告は実名登録制SNSである「Facebook」の広告データを活用して、ターゲットの年齢、性別、職業、結婚/未婚、趣味趣向、さらには広告を配信する国、地域、言語でも広告配信先をフィルタリングできます。
狙ったイメージのユーザーに情報をリーチさせやすいため、自社の海外進出時の認知拡大~購買までの各フェーズで力強い味方となってくれるでしょう。
参考:Success Stories「CAPCON」|Instagram Business
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3. 海外現地で人気のSNSインフルエンサー、KOLにPRしてもらう
SNSを活用したマーケティング手法として近年、非常に注目されている手法がインフルエンサーマーケティングです。
インフルエンサーとは特定のコミュニティにおいて多くの人々に対して高い影響力を持った人々のことで、主にSNSで多数のフォロワーに対して大きな影響力を持った人のことを指します。特定の分野において高い専門性を持ったインフルエンサーは「KOL(Key Opinion Leader)」などとも呼ばれています。
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インフルエンサーとは?意味と定義から注目すべきアカウントまで解説
そうしたインフルエンサーやKOLにブランド・製品・サービスのPRを行ってもらい、インフルエンサーが抱える多数のフォロワーに情報を届けるマーケティング手法がインフルエンサーマーケティングです。
海外進出でSNSを活用したインフルエンサーマーケティングを行う際のメリットとデメリットには以下のようなものが挙げられます。
メリット
インフルエンサーマーケティングの最大のメリットは、自社にはない数万人~数百万人という膨大なフォロワーに対して製品やサービスをPRできる点です。
また、インフルエンサーの専門とするジャンル(美容、ファッション、グルメ、旅行など)に興味のあるフォロワーに対してブランドの情報を発信できるため、ターゲティングがしやすく自社と親和性の高いSNSユーザーへ製品やサービスをPRできる点も魅力です。
海外進出であれば現地で人気のインフルエンサーを起用することで、その国や地域のトレンドを取り入れた訴求力の高いPRを実現できる点も海外進出時のマーケティングの強みとなります。
デメリット
海外におけるインフルエンサーマーケティングでは、主に現地で人気の高い海外のインフルエンサーを起用することになります。その際大きなハードルとなるのが言語の壁です。
インフルエンサーも現地の人物である場合、現地の言葉や文化に精通した担当スタッフがマネジメントやディレクションをしなければインフルエンサーとの意思疎通ができなくなります。
日本との文化や価値観、興味・関心の違いに加え、自社と親和性の高い海外インフルエンサーの選定・依頼をする難易度が高いこともデメリットとして挙げられます。
したがって、インフルエンサーを起用する場合はインフルエンサーキャスティング会社から海外インフルエンサーを紹介してもらうケースが多くなるでしょう。
海外進出企業によるインフルエンサーマーケティング成功事例
日本企業の海外進出にインフルエンサーマーケティングを取り入れた事例として「JETRO(日本貿易振興機構、ジェトロ)」の取り組みを紹介します。
JETROは、全世界約50カ国、70以上の事業所を有しており、対日投資の促進や日本企業の海外展開などを支援している日本の独立行政法人です。
2019年2月、JETROはイギリスにて日本酒を広めるべく「LONDON SAKE WEEK」を実施しました。LONDON SAKE WEEKとは、ロンドン現地の飲食店と協力したキャンペーンで、プロジェクト加盟レストランはキャンペーン期間中に特別メニューを注文したお客様へ無料で日本酒を提供するというものです。
画像:LONDON SAKE WEEK|Food and Sake.com
日本酒を無料で飲めるというこのキャンペーンですが、より多くの人にキャンペーンを認知させるためにイギリスの人気ユーチューバー(インフルエンサー)である「SORTEDfood」に依頼しプロモーションを行いました。
「SORTEDfood」はイギリスの人気料理YouTubeチャンネルで、料理情報に特化したコンテンツを配信しています。5名のユニークなメンバーによる料理の紹介や企画は多くのユーザーを魅了し、2019年12月現在のチャンネル登録者数(フォロワー数)は230万人を超える大きな人気を獲得しています。
動画の内容は、LONDON SAKE WEEKに参加しているいくつかのレストランを訪問し、実際に日本食と日本酒を堪能するというもの。楽しい雰囲気の中で本格的な日本食に舌鼓している姿を見ていると実際に店に行ってみたい気持ちが沸き上がってきます。
動画の終わりには、LONDON SAKE WEEKについての紹介もされています。このSORTEDfood によりPRされた動画は2019年12月時点で合計46万再生を超える大きな話題となり、日本酒の認知獲得および店舗への集客に大きく貢献しました。
海外で人気のインフルエンサーを広告塔として起用しPRしてもらうことで、自社にはない数万から数百万人という多くのフォロワーに自社ブランド・キャンペーンについて訴求した成功した事例です。
海外インフルエンサーの起用はインフルエンサーが外国人である以上、大きなハードルが存在することが否めません。
しかし、近年では海外インフルエンサーをプロデュースする事務所やMCN(マルチチャンネルネットワーク)も見られるようになりました。そのため、海外インフルエンサーの起用ハードルは低くなりつつあると言えるでしょう。
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ビジネスの海外進出にSNSを活用する際のポイント
最後に、ビジネスの海外進出でSNSを活用する際のポイントについてまとめてまいりましょう。
言語の壁を克服する
現地の人々と言葉による意思疎通を行うことができなければ何もすることができません。ビジネスの海外進出にSNSを活用する際には言語の壁を克服することが必須条件となります。
独特の表現や言い回しなども存在するため、ネイティブに近いレベルで現地の言葉に習熟したスタッフの教育や採用が理想です。
また、海外進出する国によっても言語が異なってくるため、自社の進出予定とする国の言語を選択するようにしましょう。
ターゲットとする消費者と親和性の高いSNSを選択する
SNSを活用しマーケティングを行っても、自社や商材をPRしたいターゲット層がPR投稿や広告を見てくれなければ当然マーケティングの効果は出ません。
たとえば、世界で一般的に使われているFacebook、Instagram、YouTubeなどは、中国ではほとんど使われていません。中国では国内で開発されたWeibo、Wechat、TikTokなどが人気となっています。
その国によって人気のSNSやSNSの使われ方は異なりますので、ターゲットとする消費者層がどのSNSをどのように利用しているのかをあらかじめ十分に調査した上で、ターゲット層と親和性の高いSNSを選択してマーケティングを行いましょう。
海外現地について深く理解するために市場規模、文化や消費者ニーズ、トレンドなど徹底した市場調査を行う
ビジネスの海外進出には徹底した事前調査が欠かせません。海外市場でSNSマーケティングを行う上でも、その国について深く理解することが効果的なマーケティングを実現させるための重要な要素となります。
現地の市場規模はもちろん、日本と異なる地域の文化や消費者ニーズ、どういったものが流行しているか、SNSではどのような見せ方がトレンドになっているのかなど、実際に現地視察してその国の人にヒアリングするなど消費者のリアルな声を集めましょう。
海外現地の商習慣にあわせたビジネスモデルを設計する
海外で活動する以上、現地の様々な企業や組織と交流を行いながら事業を展開していくことになります。
日本では当たり前の売り方でも、海外では文化的に好まれていない場合もあり、日本で成功したビジネスモデルを安易に現地へ輸入すると海外進出時に痛い目をみることになります。
商習慣なども日本とは異なる場合がほとんどですので、現地の人々やスタッフ、ビジネスパートナーと良好な関係を築き、末永い事業展開を行えるようビジネスモデルも現地に合わせた形で十分に検討・設計するようにしましょう。
海外現地に特化させたWEBページやECサイトを準備する
海外の消費者を相手に事業を行っていく訳ですので、SNSだけでなく集客の受け皿としての自社ウェブサイトやECサイトも現地仕様にあわせて制作しなければなりません。
現地に合わせた言語を使用することはもちろん、デザインやレイアウトなども現地の人々が好んで利用しやすいウェブサイトを準備しましょう。
デジタルマーケティングを行う上で、自社ウェブサイトは進出先の国において自社の顔となります。認知度の低い企業に加えて使いにくいWEBサイトともなればすぐ離脱されて終わりですので、ウェブサイトも妥協なく洗練させておくことが大切です。
まとめ
日本企業が海外進出を行う際のSNS活用法について解説してまいりました。海外では様々な要素が異なり、ひと言で海外進出と言っても手間と労力、時間のかかる要素が多数存在しています。
しかしながら、SNSの発展と普及以前と比較して大幅に海外進出を行いやすくなったのも事実です。特にマーケティングはSNSを活用することでかつてより大幅に労力と時間を削減することが可能になりました。
依然難しい要素も多く存在しますが、これから海外進出を考えている企業のご担当者様はこの機会にぜひ、SNSを活用してみてはいかがでしょうか。今回の記事が参考としてその一助となれば幸いです。
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