近年、テレビやインターネットの情報サイト、新聞などで「SDGs」という言葉を目にしたり耳にする機会が増えました。
SDGsが採択されて以降、その知名度は徐々に高まりを見せており、今年2021年時点で約半数の日本人が何らかの形でSDGsを認知していると言われています。
一方でSDGsの認知度は未だ十分でないとも言われており、実際に取り組んでいる人の割合となると更に落ち込みます。
今回の記事ではSDGsについての解説と、企業におけるSDGsの取り組みについて解説してまいります。
SDGsについての理解を深め、自社でSDGsに取り組む際の参考として役立てていただけると幸いです。
目次
- 1 SDGsとは
- 2 SDGs17のゴール
- 2.1 1.【貧困】貧困をなくそう
- 2.2 2.【飢餓】飢餓をゼロに
- 2.3 3.【保健】すべての人に健康と福祉を
- 2.4 4.【教育】質の高い教育をみんなに
- 2.5 5.【ジェンダー】ジェンダー平等を実現しよう
- 2.6 6.【水・衛生】安全な水とトイレを世界中に
- 2.7 7.【エネルギー】エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 2.8 8.【経済成長と雇用】働きがいも経済成長も
- 2.9 9.【インフラ、産業化、イノベーション】産業と技術革新の基盤をつくろう
- 2.10 10.【不平等】人や国の不平等をなくそう
- 2.11 11.【持続可能な都市】住み続けられるまちづくりを
- 2.12 12.【持続可能な消費と生産】つくる責任、つかう責任
- 2.13 13.【気候変動】気候変動に具体的な対策を
- 2.14 14.【海洋資源】海の豊かさを守ろう
- 2.15 15.【陸上資源】陸の豊かさを守ろう
- 2.16 16.【平和】平和と公正をすべての人に
- 2.17 17.【実施手段】パートナーシップで目標を達成しよう
- 3 SDGsの実現に向けた動き
- 4 企業としてSDGsの達成に取り組むメリット
- 5 まとめ
SDGsとは
はじめに、SDGsの概要について解説いたします。
SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、日本語で「持続可能な開発目標」のことであり、世界的に定めた17の目標、169の達成基準、232の指標から構成されている国際的な開発目標のことです。
SDGsは、2015年に終了した「ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)」の後継となる2015年から2030年にかけての長期的開発指針であり、2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核を成す「持続可能な開発目標」を指しています。
17の目標については後に詳しくご紹介いたしますが、SDGsの基本方針と目的は以下のようになります。
- ミレニアム開発目標(MDGs)で達成できなかったものの実現
- すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等と全ての女性と女児の能力強化の達成
- 統合されており、かつ不可分なもので、持続可能な開発の三側面である、経済・社会・環境を調和させる
- 人類および地球に極めて重要な分野で、向こう15年にわたり行動を促進させる
つまり、ざっくり簡単にまとめると、
- 老若男女が平等に過ごせる・活躍できる社会を整備し
- 地球環境の維持・回復を進め
- 経済を活性化させて
- 地球の多くの生き物・人々が永く過ごせる状態をつくっていく
という世界的な目的を達成するための目標が「SDGs」になります。
SDGsが重要とされる背景
SDGsの前身であるMDGsでは、開発途上国向けの開発目標として以下の8つの目標が設定されていました。
- 極度の貧困と飢餓の撲滅
- 初等教育の完全普及の達成
- ジェンダー平等推進と女性の地位向上
- 乳幼児死亡率の削減
- 妊産婦の健康の改善
- HIVやマラリア、その他の疾病の蔓延防止
- 環境の持続可能性確保
- 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
これらの目標のいくつかは達成し、MDGsは一定の成果を挙げたと言えるものの、未達成の課題も多く残されました。
加えて、開発途上国の問題解決に対してその内容を先進国が決めていたことへの途上国からの反発や、地域による進展の偏りといった問題点への指摘も存在しました。
後継となるSDGsではMDGsにあった様々な問題を解決すべく、世界中の国々が一丸となって達成すべき目標が設定されており、誰ひとり取り残さないことが最大の理念として定められています。
先進国・途上国問わず全ての国がSDGsの達成に向けて行動することが求められており、あらゆる国家・企業・人々の協力が目標達成のための重要な要素となっています。
地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)が近づいていることを実感している人々が多いこともSDGsの注目度が高まっている要因のひとつであり、SDGsへの取り組みが消費の選択基準となる人も出てきています。
企業のSDGsの取り組みを重要視する意識の高い人々も若者や学生を中心に増加傾向にあり、企業が自社のSDGsの取り組みをアピールポイントとして情報発信したり活動している例も増えています。
SDGs17のゴール
次に、SDGsのメインとも言える2030年までに達成を目指す17の目標について、それぞれの概要と実現のための方法をご紹介してまいります。
具体的な目標は以下の通りです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任、つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさを守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
以下にそれぞれ紹介していきましょう。
1.【貧困】貧困をなくそう
第1の目標は「貧困をなくそう」です。
あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせることを目指しています。
- 地球上のあらゆる場所における貧困問題の解消
- 貧困層に対する十分な保護の実現
- 貧困層の継続的な経済的自立を実現する権利の確保
が達成基準項目として掲げられています。
実現の方法としては、貧困を終わらせるための計画や政策を実施できるよう、後発開発途上国をはじめとした開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるために開発協力の強化などを通じて、様々な供給源から相当量の資源の同意を確保することなどが挙げられています。
2.【飢餓】飢餓をゼロに
第2の目標は「飢餓をゼロに」です。
飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進することを目指しています。
- 貧困層・幼児を含むすべての人々が、一年中安全かつ栄養のある食料を十分に得ること
- 飢餓状態にある人々の栄養不良の改善
- 食料生産者の保護や生産の効率化
- 遺伝資源や関連知識へのアクセスおよび利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分
などが達成基準項目となっており、飢餓の撲滅と維持に重点が置かれています。
実現の方法として、開発途上国、特に後発開発途上国での農業生産力を高めるため、国際協力の強化などにより農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発および植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図ることなどが挙げられています。
3.【保健】すべての人に健康と福祉を
第3の目標は「全ての人に健康と福祉を」です。
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進することを目指しています。
- 世界の妊産婦や新生児、5歳以下の幼児の死亡率削減
- 新生児および5歳未満児の予防可能な死亡の根絶
- HIV(エイズ)、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった感染症・伝染病の根絶
- 薬物やアルコールの乱用防止と治療強化
- 世界の道路交通事故死傷者の半減
- 性と生殖に関する保健サービスの拡充
目標達成へのアプローチとして、主に開発途上国に影響を及ぼす感染性および非感染性疾患のワクチンならびに医薬品の研究開発の支援や、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定 (TRIPS協定)やドーハ宣言に従った、安価な必須医薬品やワクチンへのアクセスの提供といった方法が提示されています。
4.【教育】質の高い教育をみんなに
第4の目標は「質の高い教育をみんなに」です。
すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進することを目指しています。
- すべての子どもたちが男女の区別なく質の高い乳幼児の発達・ケアおよび就学前教育を受けられる
- 無償かつ公正で質の高い初等教育および中等教育を修了できるようにする
ことが達成基準項目となっています。子供だけでなく大人も本目標の対象であり、教育における平等の実現、具体的には
- 男女区別なく、脆弱層を含めたすべての人が質の高い技術教育・職業教育を平等に受けられるようにすること
- 大学を含む高等教育を平等に受けられるようにすること
- 技術的・職業的スキルの習得や起業に必要な技能を習得する機会を増やすこと
も盛り込まれています。
※脆弱層とは、ジェンダー格差、障碍者、先住民および脆弱な立場にある子どもなど
全ての学習者が持続可能な開発を促進するために必要な知識および技能を習得できる環境づくりも達成基準項目のひとつです。
目標達成のためのアプローチのひとつとして、開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の大幅な増員の実現が提示されています。
5.【ジェンダー】ジェンダー平等を実現しよう
第5の目標は「ジェンダー平等を実現しよう」です。
ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児の能力強化を行うことを目指しています。
- あらゆる場所における全ての女性・女児に対するあらゆる形態の差別の撤廃
- 人身売買や性的その他の種類の搾取などすべての女性・女子に対するあらゆる形態の暴力の排除
が達成基準項目として設定されています。
その他、
- 女性に対するあらゆる有害な慣行の撤廃
- 女性の権利拡大や地位の向上
などの確保が盛り込まれています。
目標達成の方法としては、ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性・女子のあらゆるレベルでエンパワーメントのため、適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化することなどが挙げられています。
6.【水・衛生】安全な水とトイレを世界中に
第6の目標は「安全な水とトイレを世界中に」です。
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保することを目指しています。
- すべての人々が安全で安価な飲料水を普遍的に確保できるようにすること
- すべての人々が適切かつ平等な下水施設・衛生施設を利用できるようにし、野外への排泄をなくすこと
- 特に女性や女子ならびに脆弱な立場にある人々の要望に特に配慮すること
が達成基準項目とされています。また、
- 有害な化学物質の排出や不法投棄の削減による汚染の削減やリサイクル・リユースの割合の増加
- 未処理の下水の割合半減と水質の改善
- 淡水の持続的な採取と供給の確保
- 水不足への対処のための統合的な水資源管理や水場における生態系の保護・回復
など、水に関する様々な要素が達成基準項目として盛り込まれています。
集水、海水淡水化、水の効率的利用、廃水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野の活動や計画を対象とした国際協力とキャパシティ・ビルディング支援拡大が目標達成のための方法のひとつとして提示されています。
7.【エネルギー】エネルギーをみんなにそしてクリーンに
第7の目標は「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」です。
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保することを目指しています。
- 世界中で安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスの普遍的な利用手段を確保すること
- 世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させること
- 世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させること
が達成基準項目です。
この目標では、あらゆる場所での安定したエネルギー供給と、環境に配慮したクリーンなエネルギーの利用が重要視されています。
目標達成の方法として、再生可能エネルギー、エネルギー効率、先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究および技術の導入と利用を促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術に対する投資の促進が挙げられています。
8.【経済成長と雇用】働きがいも経済成長も
第8の目標は「働きがいも経済成長も」です。
包摂的かつ持続可能な経済成長およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進することを目指しています。
- 各国の状況に応じた一人当たりの経済成長率の持続や多様化
- 技術向上および技術革新を通じた高レベルの経済生産性の達成
- 雇用創出や企業の促進
といった達成基準項目が設定されています。
- 若者や障碍者を含む男女全ての完全かつ生産的で働きがいのある人間らしい雇用
- 同一労働同一賃金の達成
- 就労・就学・職業訓練のいずれも行っていない若者の割合の減少
- あらゆる形態の児童就労の禁止・撲滅
など働き方に関する項目も盛り込まれています。
その他にも労働や雇用に関する達成基準項目が設定されており、目標達成のための方法として、後発開発途上国のための拡大統合フレームワークなどを通じての開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助拡大などが挙げられています。
9.【インフラ、産業化、イノベーション】産業と技術革新の基盤をつくろう
第9の目標は「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。
強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及び改革の推進を図ることを具体的な目標としています。
- 高品質で信頼性が高く、持続可能な地域・越境インフラの構築
- 包摂的かつ持続可能な産業化の促進
- 資源利用効率の向上
- 環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善による持続可能性の向上
- 技術革新の促進や研究開発従事者数の大幅な増加
といった達成基準項目が設けられています。
この目標の達成には、産業の多様化や商品の付加価値創造などに資する制作環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発や研究、技術革新を支援するなどの方法が挙げられています。
10.【不平等】人や国の不平等をなくそう
第10の目標は「人や国の不平等をなくそう」です。
各国内及び各国間の不平等を是正することを目指しています。
- 各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し持続させる
- 年齢・性別・障害・人種・民族・出自・宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく全ての人々のエンパワーメント、社会的、経済的、および政治的な包含を促進する
という「人」の不平等を是正する達成基準項目。
- 世界的な国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力の拡大
- さらに上記を通したより効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度の実現
といった「国」の不平等を是正する達成基準項目も設定されています。
この他にも人や国の不平等を是正することに関する達成基準項目が盛り込まれており、目標の達成に向けて世界貿易機関(WTO)の協定に従い、後発開発途上国をはじめとして、開発途上国に対する差異のある特別な待遇の原則を実施するなどの方法が提示されています。
11.【持続可能な都市】住み続けられるまちづくりを
第11の目標は「住み続けられるまちづくりを」です。
包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現することを目指した目標です。
- 住宅や公共交通機関をはじめとした輸送システムの整備
- 災害への対策や大気汚染・廃棄物による環境影響への対策
- 世界の文化遺産および自然遺産の保全・開発制限取り組み
住み良いまちづくり、都市の安全性・強靭性確保、環境保護などに関する達成基準項目も設定されています。
目標達成に向けて、財政および技術支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靭な建造物の整備を支援するなどの方法が挙げられています。
12.【持続可能な消費と生産】つくる責任、つかう責任
第12の目標は「つくる責任つかう責任」です。
持続可能な生産消費形態を確保することを目指しています。
- 持続的な消費と生産に関する10年枠組みプログラム(10YFP)の実施
- 先進国主導のもと開発途上国の開発状況や能力を勘案しすべての国々が対策を講じる
- 天然資源の持続可能な管理および効率的利用の達成
- 食品廃棄物の削減、リデュース・リユース・リサイクル(3R)による廃棄物排出量の大幅な削減
など、持続可能な消費と生産を実現するための様々な達成基準項目が盛り込まれています。
この目標では取り組みの例として、持続可能な開発が雇用を創出し、地元の文化や産品の販促につながる持続可能な観光業にもたらす影響のモニタリングツールの開発と導入が挙げられています。
13.【気候変動】気候変動に具体的な対策を
第13の目標は「気候変動に具体的な対策を」です。
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じることを進めていきます。
- 気候変動に起因する危険や自然災害に対する強靭性・適応力の強化
- 気候変動対策を国別の制作や戦略および計画に盛り込むこと
- 早期警告に関する教育、啓発、人的能力および制度機能の改善
といった達成基準項目が設けられています。
目標達成に向けた取り組みの一例として、女性や若者および社会的弱者コミュニティの重点化などを通じて、後発開発途上国における気候変動関連の効果的な計画策定や管理の能力を向上するためのメカニズムの推進が挙げられます。
14.【海洋資源】海の豊かさを守ろう
第14の目標は「海の豊かさを守ろう」です。
持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用することを目指しています。
- 海洋汚染の防止や海洋および沿岸における生態系の強靭性強化や回復取り組み
- 漁獲の効果的規制による破壊的漁業慣行の撤廃
- 科学的情報に基づいた管理計画の実施により水産資源を少なくとも各資源の生物学的特性によって定められた持続的生産量レベルまでの回復させる
ことなどの達成基準項目が定められています。
本目標達成に向けた取り組みとして、漁業、水産養殖、観光の持続可能な管理などを通じた、小島嶼開発途上国および後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的利益を増加させることなどが挙げられています。
15.【陸上資源】陸の豊かさを守ろう
第15の目標は「陸の豊かさも守ろう」です。
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止することを目的としています。
国際協定下の義務に則り、
森林・湿地・産地・乾燥地などをはじめとした生態系におけるサービスの保全や回復、持続可能な利用を確保する
という達成基準項目が第一に設定されています。
また、生態系に関する項目以外にもあらゆる陸地環境の保護や回復、持続可能な利用の推進が達成基準として盛り込まれています。
目的達成に向けた取り組みとしては、生物多様性と生態系の保全に加え、持続的な利用のためにあらゆる供給源からの資金の動員および大幅な増加を行うことなどが例として挙げられています。
16.【平和】平和と公正をすべての人に
第16の目標は「平和と公正をすべての人に」です。
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築することを目指します。
あらゆる場所において、
- 暴力や暴力に関連する死亡率の大幅な減少
- 子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の撲滅
- 国家および国際的レベルでの法の支配の促進
- すべての人々に司法への平等なアクセスを提供すること
- あらゆる犯罪、違法な資金や武器の取引減少・根絶
- 透明性の高い公共機関の発展
- すべての人への法的な身分証明の提供
など、すべての人にとっての平和と公正を実現するための様々な達成基準項目が設けられています。
取り組みの例としては、特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズムや犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでのキャパシティビルディングのため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化することなどが挙げられています。
17.【実施手段】パートナーシップで目標を達成しよう
最後となる第17の目標は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化することを目的としており、国同士の国際的な協力を推進する達成基準項目が多数設定されています。
経済的、人員的、技術的な協力を経て、先進国と開発途上国がそれぞれの立場から相互に協力し、持続可能な開発の実現を目指します。
他の目標と比較して設定されている達成基準項目が圧倒的に多く、SDGsにおいてグローバル・パートナーシップの活性化非常に重要視されていることがわかります。
SDGsの実現に向けた動き
SDGsにおける17の目標についてご紹介してまいりましたが、実際はどの程度SDGsへの取り組みが進んでいるのでしょうか。
世界の国々がどのようにSDGsへ取り組んでいるのか、また日本はどのようにSDGsへ取り組んでいるのかをご紹介いたします。
SDGsに関する世界の動き
世界各国のSDGsへの取り組みの進捗を調べてみると、2021年現在最も達成度が高い国はフィンランドとなっています。
その後にスウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギーと続き、上位の10か国は全てヨーロッパの国々となっている状況です。
ヨーロッパの国々の達成度の高さが目立つ一方で、我が国日本の順位は18位と決して高い順位とは言えず、世界最大の先進国であるアメリカについてはさらに達成度が低く32位となっています。
このことからもわかるように、先進国ほどSDGsの達成度が高いという訳では決してなく、国家や国民のSDGsに対する意識の高さと積極性、取り組みの質が達成度を決める重要な要素と言えます。
しかしながら、SDGs達成度の高い国であっても未だ達成できていない目標も多いです。
2021年現在最もSDGsの達成度が高いフィンランドでは、
- 目標1「貧困をなくそう」
- 目標4「質の高い教育をみんなに」
- 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
- 目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」
において目標の達成と判定されており、順調に達成を維持していると評価されています。
その他の目標についても、課題は未だ残るもののある程度改善が進んでいると評価されているものが多いものの、大きな課題が残っている目標も少なくありません。
例えば、目標12「つくる責任つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」については結果を残せておらず、大きな課題が残っている目標であり、進行も停滞していると判定されています。
SDGsの達成度が最も高いフィンランドであってもこのような状況なので、世界全体で見た場合SDGsへの取り組みは全く十分とは言えず、更に積極的にSDGsへ取り組む必要があると言える現状です。
SDGsに関する日本の動き
日本のSDGs達成度は上位のヨーロッパの国々と比較すると低いものの、
- 目標4「質の高い教育をみんなに」
- 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
- 目標16「平和と公正をすべての人に」
の3つの目標は達成しており、順調に維持しています。
その他の目標についても、未だ達成には至らず課題が残ってはいるものの達成に向けて順調に推移しているものが多いです。
一方で
- 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 目標14「海の豊かさを守ろう」
- 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
の4つの目標については達成が遠く、大きな課題が残っている状況です。
目標15「陸の豊かさも守ろう」については大きな課題が残っているだけでなく取り組みが全く足りていないと評価されています。
日本政府はSDGsに関わる施策の実施について「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げる5つのPである
- People(人間)
- Prosperity(繁栄)
- Planet(地球)
- Peace(平和)
- Partnership(パートナーシップ)
に対応した8項目を優先課題とし取り組みを進めています。
政府のみならず、企業が積極的に経営に導入するなど、多様な主体でSDGsに取り組んでいる日本ですが、一定の成果を出している一方でその取り組みは未だ十分とは言えません。
SDGs未来都市および先進都市の選定や、自治体SDGsモデル事業、政府以外の組織・団体によるSDGsに向けた取り組みなどげ現在も進められており、今後も取り組みを継続していくことが目標の達成を実現していく上で重要です。
企業としてSDGsの達成に取り組むメリット
前述のとおり、日本ではSDGsへの取り組みを企業が積極的に経営に導入しています。
ここで企業としてSDGsの達成に取り組むことのメリットをご紹介してまいります。
SDGsに則したビジネスを進めることで世界の流れに乗ることができる
SDGsは国連で採択されたものであり、世界各国の政府や企業、一般の人々に至るまで一丸となって取り組むことが求められている事業です。
SDGsへの取り組みは言わば世界全体の時流と言え、SDGsに則したビジネスを進めることは世界の流れに乗るということになります。
逆にSDGsに取り組まなければ世界の流れから取り残されることとなり、SDGsに取り組むことで企業が得られる様々なメリットやチャンスを逃してしまうことになるでしょう。
業務効率化・生産性向上につながる
SDGsの目標の中には企業の業務効率化や生産性向上につながるものがあります。
テクノロジー面での発展が業務効率化や生産性の向上につながることはもちろんのこと、目標の達成によって従業員やステークホルダー、顧客と企業がより良い関係を築けるようになれば人的な面でも業務効率化・生産性向上に大きな効果が望めます。
新規市場開拓やビジネスチャンス創出につながる
SDGsの目標達成に取り組む過程で新たな需要が発生する場合があります。
新たな需要が発生すれば新規市場開拓やビジネスチャンスの創出につながる可能性があり、うまく機会を活かすことができれば大きな利益をあげることや新しいビジネスモデルを作り出すことも可能です。
企業としても持続可能な成長ができる
SDGsへの取り組みは、テクノロジー面と人材面の双方において企業の持続可能な成長をもたらします。
業務効率化や生産性向上が実現できれば企業の利益は増加し、企業で働く従業員の労働環境が改善し企業との関係が改善すれば離職率も低下するためです。
共通の目標を持ちともに活動することで社内に生まれる一体感による従業員のモチベーションアップも企業の持続可能な成長につながることでしょう。
後述の社会的信頼の獲得につながるという点も企業の持続可能な成長を実現させる要因となります。
社会的な信頼獲得につながる。反対にSDGsを進めていないと社会的評価が下がる
SDGsは前述のとおり国連で採択されたものであり、SDGsへの取り組みは世界にも通用する社会貢献活動です。
SDGsに積極的に取り組む企業とはつまり社会貢献活動に積極的に取り組む企業ということであり、社会的な信頼獲得につながります。
顧客からの共感を得ることができ売上の増加が期待できるほか、ステークホルダーとの関係も良好なものとなるため、融資を受ける際や取引においても有利に進めやすくなり、新たな人材を採用する際にも良質な人材を採用しやすくなることでしょう。
逆にSDGsに取り組んでいない場合は企業の社会的評価が下がることとなり、SDGsに取り組んでいた場合と真逆のデメリットが生じる可能性があります。
企業活動をアピールできる
企業としてのSDGsへの取り組みは先の項で述べたとおり企業の社会的な信頼の獲得につながります。
これにより非常にイメージの良いブランディングが可能になり、多くの人々に自社に対する良いイメージを持ってもらうことが可能です。
自社の取り組みが顧客層にとって興味深いものであればより効果的に企業イメージを高めることも可能です。
まとめ
社会貢献活動への取り組みは企業にある程度の負担を強いることが多く、それはSDGsについても同様です。
とは言え、SDGsは国連によって採択されたものであり、その規模は世界規模と非常に大掛かりな社会貢献活動であり、企業にもたらすメリットも非常に大きなものです。
SDGsに取り組まなかった場合に受けるデメリットの可能性も考慮して、SDGsには可能な限り取り組むことがおすすめです。
参考:持続可能な開発目標 カラーホイールを含むSDGsロゴと17のアイコンの使用ガイドライン